墜落防止用器具として高所作業時における安全を守ってくれるフルハーネスですが、タイプもさまざまなため選び方に苦慮する方も少なくないでしょう。
ここではフルハーネスの特徴のほか、選び方のポイントなどを中心に解説していますので、ぜひフルハーネス選びの参考にしてみてください。
:フルハーネスとは
フルハーネスは「墜落制止用器具」のことで、高所作業を行う建設業になくてはならない重要なアイテムです。以前は「安全帯」とも呼ばれていたため、昔から建設業に携わっている方ならそちらの方がなじみ深い呼称かもしれませんね。
2019年に施行された安全衛生法によって、これまで「安全帯」として親しまれてきたフルハーネスの呼称も「墜落制止用器具」へと変更され現在に至ります。
:高所作業に必須のフルハーネス
フルハーネスは、作業床のない2メートル以上の高所にて作業をする際に着用が義務付けられており、フルハーネスを装着することで思わぬ墜落事故などのアクシデントに備えることができます。
以前は、胴に巻いて使用するいわゆる「胴ベルトタイプ(U字吊り)」も安全帯として使用されていましたが、実際には墜落を制止する機能に乏しいことから、安全衛生法の改正後は墜落制止用器具からは除外されています。もし現場で胴ベルトタイプを使用する場合は、フルハーネスと併用して使用しなければなりませんので注意が必要です。
:フルハーネスと胴ベルトタイプの違い
では、一般的に「ハーネス」と呼ばれる胴ベルトタイプのものと、フルハーネスとではどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの違いについて見ていきましょう。
:ワークポジショニングのための胴ベルトタイプ
胴ベルトタイプのハーネスは、基本的にワークポジショニングのために使用されることがほとんどです。
墜落(落下)を防ぐために使用するというよりも、高所で腰に巻いたベルトに体を預けて、両手を自由な状態にして作業することを目的として用いられています。
分かりやすく言うと、高所において作業しやすい姿勢を確保するためのアイテムということになります。使用しているときの状態がU字に見えることから、「U字吊り」とも呼ばれます。
:墜落制止を目的としたフルハーネス
一方、フルハーネスは墜落制止に重点を置いたアイテムです。胴部分のベルトだけで体を支える胴ベルトタイプとは違い、腰・大腿部分・肩など複数箇所で支えられるようになっているのが特徴です。
胴ベルトタイプに比べて安全性が極めて高く、複数個所で体を支えるために長時間の作業でも負荷を感じにくい点も魅力の一つです。
:フルハーネスの選び方
フルハーネスにはいくつかの種類があり、作業内容に応じて使い分けることもできます。選び方としては、まず作業内容に合ったフルハーネスのタイプを選択すること、落下時の衝撃を分散してくれる効果のある胴ベルトのタイプを選択すること、そして作業環境に合ったランヤードを選択することなど、いくつかのポイントに分けられます。
:フルハーネスの型を選ぶ
フルハーネスには、H型・Y型・X型などの種類があります。
H型 |
3種類の中で最も安定感のあるタイプで、着用時に着崩れしないのが特徴 |
Y型 |
腰回りがすっきりしているため、腰袋を着用するような作業に向いたタイプ |
X型 |
3種類の中で最もフィット感のあるタイプ。スタンダードなタイプとして広く親しまれている |
フルハーネスは、墜落発生時に肩・腰・大腿部分で体を支えることができるため、落下時の衝撃が分散されやすく、体に与える損傷を最小限に抑えられるメリットがあります。
:体型に合わせて適切なサイズを選ぶ
墜落防止用器具として用いるのがフルハーネスの役割ですから、体型に合ったものを選ばなければ安全性能が著しく低下してしまう原因になります。
しかし、そもそも通常の衣服とは違うため、一目見ただけでは簡単にサイズを知ることができないというデメリットもあります。
フルハーネスのサイズはメーカーの情報を参考にするのがおすすめです。目安としてある程度のサイズが分かれば、自身に合ったサイズも選びやすくなります。また、サイズを調整可能なフリーサイズもありますので、そうしたタイプを選んで自分なりに調整する方法もおすすめです。
:胴ベルトのタイプも決めておく
落下時の衝撃分散に大きな効果を発揮してくれるのが胴部分に装着する胴ベルトです。胴ベルトなしでフルハーネスを使用することは可能ですが、胴ベルトを着用した方が安全性だけでなく作業効率のアップも期待できます。
スライドバックルタイプ |
ベルトタイプでしっかりと締め上げてくれるのが特徴。軽量のため作業もしやすい |
ワンタッチバックルタイプ |
着脱が容易に行えるため、すぐに着脱したい場合などに便利 |
逆に、胴ベルトを付けないことによって締め付け感の軽減などを図ることもできます。ただし、胴ベルトがないと腰道具を付けることができないため、作業の内容によっては不便に感じてしまう可能性もあります。
どのような高所作業をするのかに応じて、胴ベルトのタイプを適宜チョイスするのがいいでしょう。
:ランヤードのタイプを選ぶ
ランヤードとはいわゆる命綱のことです。万が一墜落した際に命を守ってくれる大切な存在です。
ランヤードのタイプは主に3種類に分けられます。
2丁掛け |
ツインタイプのランヤードで、さまざまな体勢で作業をする場合に向いたタイプ |
1丁掛け |
シングルタイプなので軽量なのが特徴。必要最低限のコストに抑えたい場合におすすめ |
1丁掛け+1丁掛け |
2本の1丁掛けを用いて使い分ける方法。組み合わせが自由なので2丁掛けよりも使いやすいのが魅力 |
また、ストラップを片手で操作可能な巻き取り式タイプや伸縮紐を用いたタイプのものなど、機能や素材もさまざまです。お好みに応じて選んでみましょう。
:まとめ
フルハーネスは高所作業時の必須アイテムです。種類も豊富なので、作業内容に合わせたタイプを選びやすい点もメリットの一つです。
背面・胴ベルト・ランヤードなど、それぞれに果たす役割も異なりますので、作業環境に合ったものを適切に選ぶように心がけましょう。